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SNSとメンタルヘルス

最近自分の中でHotなトピックがある。 SNSとメンタルヘルスについてだ。直近のきっかけは"No to SNS"というブログ投稿を読んでから。

No to SNS | Ken Wagatsuma

それ以前にも自分の中で何度も考えてきたトピックではあったけど、来月から"SNS"に括られるであろう会社でソフトウェアエンジニアをやる人間として、このトピックついて深く考えずにプロダクトをつくるのは無責任なように感じた。

今日は日曜日で少し時間があったので、ざっと情報を漁ってみた。
このブログはその記録。ただの情報や感想のスクラップみたいなものなので、まとまりや正確性は求めないで欲しい。

SNSとの関わり

自分はいわゆるGen Zに括られる世代で、高校生の頃にInstagramが大流行し、アカウントを持っていない友達はいなかったくらいだったと思う。
SNSを通じて他人にどう見られるか、誰が誰とやりとりしてるか、そういうことを日常的に気にして生活していたと思うし、人格形成において間違いなく何かしらの影響はあったはず。
Twitterはどちらかというとエンジニア的なことに興味を持ち始めた大学の途中から本格的に使い始めた記憶で、あまり高校時代の思い出に登場してこない。

個人的にはSNSをあまり害として捉えてきたことは少なく、SNSによってできた楽しい経験やつながり、新しい学びによる恩恵のほうを強く感じて生きてきた。
しかし、今回情報を漁る中で自分はGen Zの中でも特殊な世代であり、ちょうど良い塩梅で触れることのできた世代だったのかも知れないと思い始めた。

のちに紹介するJonathan Haiditは16歳未満のSNS利用を規制するための活動をしている。私がまさにSNSを使い始めたのは多分ちょうどそのくらいの年齢だった。

これ以前の日常にもしInstagramやTikTokがあったら、自分も違う状況に陥っていた可能性がある。
15歳、つまり中学生まではSNSの存在すら知らず、放課後はサッカーやサーフィン、ザリガニ釣り、カナヘビハントなどをしていた。
ゲームもしていたけど、オンラインでできるゲームは持っておらず、友達と公園や家に集まってウイニングイレヴンやモンスターハンターに勤しんだ。

これらのスクリーン外での活動がなくなり、大部分をTikTokやInstagram Reel, YouTube Shortなどに吸われていたらと考えた。
自分は今日見られるSNSやオンラインゲームで溢れるteenの生活と違って、ほどよいミックス環境で生きていた可能性がある。

Is SNS the only to blame?

Jonathan Haiditはアメリカの社会心理学者でSNSが若者に与える影響について多くの著作や講演歴を持っている。 YouTubeで見つけた以下の講演をみてみた。

#EIE23: Jonathan Haidt: Smartphones vs. Smart Kids

彼の話の中で特に面白かったのが、90s以降のParentingの変化についての言及だった。犯罪数は減り社会は安全になっていったのに親はSafety Firstになり、子供を常に親の監視下に置き、過保護な状態に陥ったと指摘している。
このことが共働きの家庭が増えたのと相まって、自宅で監視下に置きながら、でも遊びたい子供を鎮めるためにスマートフォンを渡してしまう。
そしてそういう過保護な環境で育った新しい世代の親が、また子供を監視下に置き、そのループが発生している。  

小学生を1人で通学させたり、親なしで子供たちで集まって遊んだりしている日本よりは、アメリカなどの欧米諸国でこそ顕著なものなんだと思う。
でも日本でも公園には「ボール遊び禁止」や「騒音禁止」といった看板が増え、外で遊ぶ機会が減少しているのも事実。スマホ外に魅力的な刺激が少ないという点においては多かれ少なかれ同じことが言えるかなと思った。

子にSNSをやめてもらいたいなら、子がSNS以外でより魅力的な選択肢を求めるのは当たり前だ。そしてここにおいては親個人ができることには限度があるし、社会全体としての取り組みが必須であるように思えた。

SNS ≠ 悪

Science VsというPodcastでは子供に限定せず、もう少し幅広い世代をターゲットに議論を展開している。

Social Media: Is It Rotting Your Brain? - Science Vs | Podcast on Spotify

これもまたとても興味深い内容だったし、個人的に疑問に思っていた部分に多く触れてくれていた。

SNSのメンタルヘルスに対する悪影響や、うつ病や自殺といったヘッドラインが並びがちな最近だけど、もちろんそんなにくっきりとSNSが悪、はたまた善と割り切れるわけはなく、そこにはグラデーションが存在し、多様なデータがある。

この一節は非常に面白いなと思った。

The more time on social media also equals more time with friends

ある研究によると、SNSでよりいいねしたり投稿したりしている人のほうが、リアルでもより多くの友達と時間を過ごしていることを示していた。
なのでSNSは友人とのリアルな遊びの時間を奪っているのではなく、昔だったら雑誌を読んだりテレビをみていたりした時間を奪っているだけなんじゃないかという仮説だ。

他にも周りの友人がSNSでつながっている状態で、SNSを利用しないことによる孤立についての議論や、SNSを辞めてもDon't really feel betterな人がいる話とか、幅広くいろんなテーマについて専門家を交えて議論していてとても面白い内容だった。

極論、"人それぞれ"になってしまうしそれではあまり議論は成り立たないんだけど、このトピックにおいては悪が極端に強くなりがちだから、多様な視点を持つことは大切だなとあらためて。

時間を奪う

SNSを批判する際に、"時間を奪う"という言い方がよく出てくる。間違いなくSNSは時間を奪うし、TikTokの競合は他のSNSだけではなくNetflixやオンラインショッピング、友達などで、ユーザー(人間)の時間を奪い合う競争をしている。

コストのかかるメディアを運用する以上、どこかでお金の話が出てくる。ここにユーザーをより長くアプリ上に滞在させて、広告による収益をあげるとかそういう議論があがってくる。

私がモバイルアプリのエンジニアとしてユーザーのリテンション向上に務めるのは、紛れもなくお金のため。クラッシュしたら広告みてもらえないし、不満が溜まったらサブスク解除してしまうかもしれないし。そういう市場のなかで私はお給料をもらって働いている。

ここにおいてユーザーを依存させることが悪かどうか、考えれば考えるほどよくわからなくなってきた。TikTokの依存性を高めてずっとスクロールさせることと、商品の魅力を高めて定期的に購入させること、美味しいラーメンをつくって毎週通わせること、どこまでの依存を良しとしてどこからを悪しとするのか。

ショート動画の破壊力

個人的にSNSが大きく変わったタイミングはTikTokの登場、言い換えるとショート動画の登場だと思う。それまでは友達が投稿するコンテンツや友達が反応しているコンテンツが自分にとってのSNSだったのに、ショート動画の登場は知らない人の無限のコンテンツが流れてくるものにSNSを変えた。これに続いて機械学習に基づいた"For You"的なタイムラインが主流になってきたと思う。

依存性という観点においては、これらのコンテンツの無限性を実現する機能たちは非常に強力で、成人して、業界で働いている自分でさえ気づいたらショート動画を1時間もスクロールしていたりする。これに同意する人は多いんじゃないかなと思う。自分にとって恐ろしさすら覚える依存性はこれらの機能が出てきてから。

SNSはHot

SNSは今とてもHotな産業だと思う。これはPopularの意味でのHotではなくて、Controversialという意味でHotだと思う。
この10年くらいですっかり当たり前になったSNSが、その生み出した莫大な金銭的&社会的利益の裏で今さまざまな問題を抱えている。それを多くの人が認知し始めたタイミング。

今SNSを運用する会社で働くことにこの意味で大きなワクワクを感じている。

今回軽く触れた文献もまたたくさんの面白そうな参考文献をそれぞれ持っていて、これからもキャッチアップしていきたいトピックだなと思う。

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